menu
close

光速コンピューティング:ガラスファイバーがAIを革新へ

フィンランドとフランスの欧州研究者チームが、超極細ガラスファイバーを通じたレーザーパルスを用いて、従来の電子回路よりも数千倍高速にAI計算を実現する画期的な技術を発表しました。このシステムは2025年6月に発表され、画像認識などのタスクで最先端に迫る精度を、1兆分の1秒未満で達成しています。このブレークスルーはAIハードウェアのアーキテクチャを根本から変革し、飛躍的な高速化と省エネ化を可能にする可能性があります。
光速コンピューティング:ガラスファイバーがAIを革新へ

人工知能ハードウェアの分野で大きな飛躍となる研究成果が発表されました。フィンランドのタンペレ大学とフランスのマリー・エ・ルイ・パストゥール大学の研究チームは、超極細ガラスファイバー内を伝わる強力なレーザーパルスを利用し、これまでにない速度で複雑なAI計算を実行できることを実証しました。

この共同研究は、ゲリー・ジャンティ教授、ジョン・ダドリー教授、ダニエル・ブルンナー教授が主導し、ポスドク研究員のマチルド・アリー博士とアンドレイ・エルモラエフ博士が重要な貢献を果たしました。彼らの光学コンピューティングシステムは、従来のシリコンベース電子回路よりも数千倍高速で情報処理が可能であることが示されました。特筆すべきは、画像認識などのタスクにおいて、従来システムと同等の精度を維持しながらこの高速処理を実現している点です。

「本研究は、非線形ファイバー光学の基礎研究が新たな計算手法を切り拓くことを示しています。物理学と機械学習を融合することで、超高速かつ省エネルギーなAIハードウェアへの新たな道を開いています」と研究リーダーたちは説明しています。

今回のブレークスルーでは、ニューラルネットワークに着想を得た「エクストリーム・ラーニング・マシン」と呼ばれる計算アーキテクチャを採用。従来の電子回路やアルゴリズムではなく、強力な光パルスとガラスの非線形相互作用を利用して計算を実現します。このアプローチは、バンド幅やデータ処理能力、消費電力など、従来の電子回路が物理的限界に近づきつつあるという課題への解決策となります。

応用範囲は学術研究にとどまりません。AIモデルがますます大規模化・高消費電力化する中、本技術は計算インフラの重大なボトルネック解消に寄与する可能性があります。研究チームは、将来的にリアルタイム動作が可能なオンチップ光学システムの開発を目指しており、リアルタイム信号処理や環境モニタリング、高速AI推論など幅広い応用が期待されています。

この開発は、LightmatterやLightSolverといった企業がフォトニック・コンピューティング分野で大きな進展を見せる中で発表されました。Lightmatterは2025年夏にM1000プラットフォームの投入を予定し、LightSolverは世界経済フォーラムの2025年テクノロジー・パイオニアに選出されるなど、次世代コンピューティングに向けた「光」の活用競争は急速に加速しています。

Source:

Latest News