アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、AIチップ分野でのNvidiaの独占に対抗する上で大きな成果を収めた。OpenAIが、戦略的パートナーシップの一環として、今後登場予定のMI450チップを採用することを発表した。
6月12日に米サンノゼで開催されたAMDの開発者会議「Advancing AI」で、CEOのリサ・スー氏は次世代MI400シリーズAIアクセラレーターとHeliosサーバープラットフォームを発表。Heliosシステムは、72基のMI400シリーズGPU、31TBのHBM4メモリ容量、1.4PBpsのメモリ帯域幅を備え、FP4精度で最大2.9エクサフロップスの性能を実現する予定だ。
OpenAIのサム・アルトマンCEOも登壇し、ChatGPTの開発元である同社がAMDの技術を採用するだけでなく、MI450チップの設計段階から積極的に協力してきたことを明かした。「最初に仕様を聞いたときは『そんなの無理だろう、正気の沙汰じゃない』と思った」とアルトマン氏は語り、「これは素晴らしいものになる」と期待を示した。
この提携は、AIハードウェア業界における大きな転換点となる。OpenAIはこれまでNvidiaの主要顧客だったが、AMDの幹部フォレスト・ノロッド氏によれば、OpenAIのフィードバックがMI450のメモリアーキテクチャや大規模AIワークロード向けのスケーリング機能に「大きな影響を与えた」という。
AMDは、自社製品をNvidia製品よりもコスト効率の高い選択肢として位置付けており、同社幹部は「取得コストや消費電力の削減により、2桁台の大幅なコスト削減が可能」と主張している。また、Heliosサーバーの仕様を一般公開するなど、オープンなエコシステムを強調しており、Nvidiaの独自技術に真っ向から挑む姿勢を見せている。
発表後、AMDの株価は約2.2%下落したが、これはAIチップ市場で推定90~98%のシェアを持つNvidiaに本格的に対抗できるか、投資家が慎重な姿勢を崩していないことを示している。AMDは2024年度のAI関連売上高を50億ドルと報告しており、JPモルガンのアナリストは今年度、この分野で60%の成長を見込んでいる。
OpenAI以外にも、AMDはAIトップ10企業のうち7社が同社のInstinctアクセラレーターで本番ワークロードを稼働していると発表。Meta、Microsoft、イーロン・マスク氏のxAIなどが含まれる。オラクル・クラウド・インフラストラクチャは最大131,072基のMI355X GPUを搭載したクラスターを提供予定で、AIクラウドプロバイダーのCrusoeはAMDの新チップを4億ドル分購入することを約束している。