Googleは、人工知能分野の強化を目指し、戦略的なリーダーシップの刷新を進めている。その一環として、Google DeepMindの最高技術責任者(CTO)であるコライ・カヴクチョグル氏を、同社初となる最高AIアーキテクト(Chief AI Architect)に任命し、AI戦略の新たな段階に突入したことを示している。
カヴクチョグル氏は、これまで通りDeepMindのCTOを務めながら、この上級副社長職を兼任する。ロンドンからカリフォルニア州マウンテンビューへ拠点を移し、CEOサンダー・ピチャイ氏の直属として連携を強化する。
この人事は、GoogleがAI技術への多額の投資を収益化する圧力に直面する重要な局面で行われた。ピチャイ氏が社員向けに送ったメモによれば、カヴクチョグル氏は「世界をリードするAIモデルをよりシームレスに製品へ統合し、迅速なイテレーションと効率化を実現する」役割を担う。
カヴクチョグル氏は、元航空宇宙エンジニアで、ニューヨーク大学で著名なAI研究者ヤン・ルカン氏のもと博士号を取得した経歴を持つ。2012年にDeepMindへ入社後、深層学習や強化学習システムなど、AI分野の主要な進歩を牽引してきた。
この経営体制の再編は、ChatGPTによる業界の変革を受け、Google全体で進む組織再編の一環でもある。2023年以降、DeepMindはGoogle Brainと統合され、共同創業者デミス・ハサビス氏の指揮のもと、Google全体のAI戦略に組み込まれている。Geminiモデルが業界をリードする存在となった一方で、Googleはこれらの技術的優位性を収益性のある消費者向け製品へ十分に転換できていない課題も抱える。
Googleは2025年だけでAIインフラに750億ドルを投資する計画を掲げており、競合のMicrosoft、Meta、OpenAIもAI開発を加速させている。こうした中、カヴクチョグル氏の昇格は、Googleが技術的優位を維持しつつ、AI研究の実用化を一層推進する決意を示すものだ。