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AI顕微鏡が「不可能な」精子を発見、初の妊娠を実現

コロンビア大学が開発したSTARシステムは、人工知能を活用して無精子症の男性から生存可能な精子を特定し、男性不妊治療に画期的な進展をもたらした。この技術はAI、マイクロ流体工学、ロボティクスを組み合わせており、従来の方法では見逃されていた精子細胞を検出できる。ある症例では、技術者が2日間かけても見つけられなかった精子が、STARによって44個発見され、2025年3月に世界初のAI支援による妊娠が成立した。
AI顕微鏡が「不可能な」精子を発見、初の妊娠を実現

コロンビア大学で開発された革新的なAI搭載システムが、重度の男性不妊に悩むカップルに新たな希望をもたらし、「不可能」とされてきたことを現実のものにしつつある。

コロンビア大学生殖医療センターのゼヴ・ウィリアムズ博士らが開発した「精子追跡・回収(STAR)システム」は、無精子症と診断された男性から生存可能な精子細胞をAIで特定・分離する。無精子症は不妊男性の約10〜15%にみられ、精液中に精子がほとんど確認できない状態だ。

5年をかけて開発されたこの技術は、高性能イメージング、AIアルゴリズム、マイクロ流体工学、ロボティクスを高度に組み合わせている。専用のマイクロ流体チップで髪の毛ほどの細さのチューブに精液を流し、高速カメラが1時間足らずで800万枚以上の画像を撮影。AIがリアルタイムで画像を解析し、精子細胞を特定すると、ロボットが即座にそれを分離し、体外受精(IVF)に利用できるようにする。

「10のフットボール場に散らばった1000個の干し草の山から、1本の針を2時間以内に見つけ出すようなものです」とウィリアムズ博士は説明する。「それがSTARシステムの精度とスピードです。」

この技術の画期的な実例として、熟練の胚培養士が2日間かけても発見できなかったサンプルから、STARがわずか1時間で44個の生存精子を見つけ出した。この発見により、19年近く不妊と15回の体外受精失敗を経験したカップルが、2025年3月に世界初のAI支援妊娠を実現した。

この成果は一例にとどまらない。無精子症の男性にとって、従来は外科的手術や精子提供といった選択肢しかなかったが、STARは非侵襲的な新たな可能性を提供し、これまで生物学的な父親になる望みがないとされた多くの男性を救うかもしれない。コロンビア大学のチームは現在、この技術を他の不妊治療にも応用できるか研究を進めており、生殖医療のあり方を根本から変える可能性がある。

Source: Washingtonpost

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