人工知能(AI)の分野では、汎用的なツールを超え、重要産業ごとの課題解決に特化したAIアプリケーションが登場し、大きな変革が進行している。
金融業界では、ロイズ銀行が生成AIツール「Athena」を導入。顧客対応の自動化、財務レポートの要約、コンプライアンスに関する洞察の提供などを担い、業務の迅速化・正確性・コスト効率向上を目指している。金融機関では、取引パターンをリアルタイムで解析するAI不正検知システムの導入が進み、最新の調査では90%の銀行が新たな不正対策としてAIを活用していることが明らかになった。
医療分野でも同様に革新的なAI活用が進む。Everlabは、AI駆動の予防医療プラットフォーム拡大のために1,000万ドルの資金調達に成功。継続的なバイオマーカーのデータから個別診断や健康アラートを生成する。また、AIによる糖尿病性網膜症の早期スクリーニングが症状発現前に高精度で可能となり、医療サービスが届きにくい地域での検査機会拡大が期待されている。SoundHoundのAI音声アシスタントは、患者受付や予約管理の効率化で医療現場への導入が進んでいる。
サイバーセキュリティ分野では、Googleが先進的なAIセキュリティツールを発表。AIエージェント「Big Sleep」は未知のソフトウェア脆弱性を自動探索し、既に実際の重大なSQLite脆弱性(CVE-2025-6965)など複数の脆弱性を発見した。他にも、内部脅威検知AI「FACADE」や、初動のフォレンジック調査を自動化しインシデント対応を加速する「Timesketch」など、AIを活用した新たなセキュリティ技術が登場している。
専門家は、こうした業界横断型AIアプリケーションの急速な進化を予測。医療分野では予測医療や早期発見へのシフトが進み、金融機関では顧客体験の向上とAIを活用した巧妙な不正への対策強化が進展。サイバーセキュリティ分野では、防御と攻撃のAI技術競争が加速し、ディープフェイクやAI生成フィッシングなど新たな脅威への対応策開発が進んでいる。
これらの特化型AIアプリケーションの成熟により、重要産業における効率化・個別化・セキュリティ強化の新たな可能性が広がる一方、規制やプライバシー、人間とAIの協働のあり方など、今後の課題も浮き彫りになっている。