ドナルド・トランプ大統領は24日(水)、米国をAI分野での世界的覇権争いの勝者とすべく、大規模な人工知能戦略「アメリカAIアクションプラン」を発表した。
このプランは、米国をAI技術の「揺るぎない世界的リーダー」とするための90以上の連邦政策アクションを特定している。トランプ大統領は、All-In PodcastおよびHill and Valley Forumが主催した発表イベントで「本日より、米国は人工知能分野で世界をリードするため、あらゆる手段を講じることを政策とする」と宣言した。
計画は3つの戦略的柱で構成される。第一に、「官僚的な足かせ」とされる規制を撤廃し、AI開発のイノベーションを加速させる。第二に、エネルギー集約型のデータセンターや半導体製造施設の許認可手続きを迅速化するなど、米国のAIインフラ整備を急速に推進する。第三の柱は、米国製ハードウェアとソフトウェアを世界のAIイノベーションの「標準」プラットフォームとするため、戦略的な輸出を強化する点だ。
重要な施策として、商務省と国務省が産業界と連携し、ハードウェア、モデル、ソフトウェア、標準規格を含む「フルスタックAI輸出パッケージ」を米国の同盟国に提供することが盛り込まれている。また、国内のエネルギー需要にも対応し、Google、Blackstone、CoreWeaveなどによるペンシルベニア州でのAI・エネルギーインフラ開発に900億ドル超の投資が発表された。
ホワイトハウスのAI・暗号資産担当責任者デビッド・サックス氏は「AI開発は今や世界的な競争であり、米国がそのレースに勝つことを目指している」と強調した。さらに、連邦政府が調達するAIシステムについては「客観的で、上意下達的なイデオロギーバイアスが排除されたもの」とする規定も盛り込まれている。
一方、80以上の労働・環境・市民権団体からなる連合体など批判的な声も上がっている。彼らは、今回の計画が産業界の利益を安全性より優先していると懸念を表明し、労働者・消費者・環境保護を重視した対案「ピープルズAIアクションプラン」を発表した。
トランプ政権のアプローチは、2025年1月の就任直後に撤回されたバイデン政権時代のAI大統領令から大きく転換したものだ。前政権が監督やリスク軽減を重視したのに対し、トランプ氏の戦略は開発加速と規制緩和によって、特に中国など競合国に対する米国の技術的優位を維持することに主眼を置いている。