アマゾン ウェブ サービス(AWS)は、組織が大規模なAIデータを保存・活用する方法を変革する、専用の耐久性ベクターストレージソリューション「Amazon S3 Vectors」を発表しました。
2025年7月15日にニューヨークで開催されたAWS Summitで発表されたS3 Vectorsは、ベクター埋め込みの保存とクエリにネイティブ対応した初のクラウドオブジェクトストアです。このサービスは、従来のベクターデータベースと比べて、ベクターのアップロード・保存・クエリにかかる総コストを最大90%削減しつつ、サブセカンドのクエリ性能を維持します。
ベクター埋め込みは、埋め込みモデルから生成される非構造データの数値表現であり、現代のAIアプリケーションに不可欠な存在です。これによりセマンティック検索機能や大規模言語モデルへの文脈提供が可能となります。しかし、従来のベクターストレージソリューションは、常時稼働する専用のコンピュートリソースを必要とし、コストが大幅に増加する傾向がありました。
AWSは発表の中で「顧客のワークロードを幅広く調査した結果、大半のベクターインデックスは常時プロビジョニングされたコンピュートやRAM、SSDを必要としていないことが分かりました」と説明しています。例えば、1,000万件のベクターを持つ従来型データベースは専用インスタンスで月額300ドル以上かかるのに対し、S3 Vectorsでは同じデータセットが25万件のクエリで月額約30ドルに抑えられます。
S3 Vectorsは、ベクター操作専用APIを備えた新しいバケットタイプを導入し、ユーザーはインフラのプロビジョニングなしでベクターデータの保存・クエリが可能です。各ベクターバケットは最大10,000個のベクターインデックスを持ち、各インデックスには数千万件のベクターを格納できます。サービスはデータセットの拡大や進化に合わせて、最適なコストパフォーマンスとなるよう自動的にベクターデータを最適化します。
このソリューションはAmazon Bedrock Knowledge Bases、Amazon SageMaker、Amazon OpenSearch Serviceとネイティブに統合されており、特にRAG(Retrieval-Augmented Generation)アプリケーションに有用です。組織は、コスト効率を重視して大規模なベクターデータセットをS3に保存し、頻繁にアクセスされるベクターのみを必要に応じてOpenSearchに移動する階層型戦略を実現できます。
S3 Vectorsは現在プレビュー提供中で、AWSはAmazon S3コンソールを通じて顧客による体験を呼びかけています。