NVIDIAは、独自の高速インターコネクト技術をサードパーティのハードウェアメーカーに開放する新しいシリコン技術「NVLink Fusion」を発表し、AIインフラへのアプローチにおいて大きな戦略転換を図った。
2025年の台北・ComputexでCEOのジェンスン・フアン氏が発表したNVLink Fusionは、顧客やパートナーがNVIDIA製品と非NVIDIA製のCPUやGPUを組み合わせて利用できるようにするものだ。フアン氏は基調講演で「NVLink Fusionによって、単なるセミカスタムチップではなく、セミカスタムAIインフラを構築できる」と述べた。
この技術にはすでに有力な初期導入企業が名を連ねている。MediaTek、Marvell、Alchip Technologies、Astera Labs、Synopsys、CadenceがNVLink Fusionを自社のカスタムシリコン設計に統合。さらに、富士通やQualcomm Technologiesも、NVIDIAのGPUと組み合わせて高性能AIファクトリーを実現するカスタムCPUの開発を計画している。
NVLink FusionはAIインフラ開発における技術的ブレークスルーだ。第5世代NVLinkプラットフォームは1GPUあたり双方向1.8TB/sの帯域幅を実現し、PCIe Gen5の14倍の速度で複雑な大規模モデル間のシームレスな高速通信を可能にする。この性能向上はAIワークロードにとって極めて重要であり、NVLinkの帯域幅が2倍になるごとにラックレベルのAI性能が1.3~1.4倍向上するという。
クラウドプロバイダーにとって、NVLink FusionはあらゆるASIC、NVIDIAのラックスケールシステム、最大800Gb/sのスループットを持つNVIDIAのエンドツーエンドネットワーキングプラットフォームを活用し、数百万台規模のGPUによるAIファクトリーのスケールアウトを可能にする。エコシステム全体は、AIデータセンターの複雑な運用管理を自動化する統合運用プラットフォーム「NVIDIA Mission Control」によって管理される。
この戦略的な動きにより、NVIDIAはカスタムシリコン化の潮流を受け入れつつ、AI開発の中心的存在としての地位をさらに強固なものとする。独自のインターコネクト技術をパートナーに開放することで、NVIDIAは将来のAIインフラをつなぐ不可欠なファブリックとしての役割を果たすことになる——たとえそのシステムが完全にNVIDIA製チップで構成されていなくても。