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光駆動テラヘルツ技術の革新、AIハードウェアを変革へ

ビーレフェルト大学の物理学者らが、半導体を1兆分の1秒という超高速で制御する画期的な変調技術を開発しました。本研究は2025年6月5日付の『Nature Communications』に掲載され、特別設計のナノスケールアンテナを用いて、テラヘルツ光を原子レベルの薄膜材料内で強力な電場に変換する手法を実証しています。この革新により、電子部品のスイッチング速度が飛躍的に向上し、次世代AIハードウェアの速度と効率が大幅に強化される可能性があります。
光駆動テラヘルツ技術の革新、AIハードウェアを変革へ

ビーレフェルト大学のドミトリー・トゥルチノビッチ教授率いる物理学者チームは、ドレスデン固体物理・材料研究ライプニッツ研究所(IFW Dresden)の研究者と協力し、AIハードウェアの実装を一変させる可能性を持つナノエレクトロニクス分野の重要なブレークスルーを達成しました。

2025年6月5日付『Nature Communications』に掲載された本研究では、原子レベルで薄い半導体を、これまでにない超短パルス光で制御する新手法を実証しています。研究チームは、テラヘルツ光を二次元材料(モリブデンジスルフィド(MoS₂)など)内の垂直電場へと変換する特殊なナノスケールアンテナを開発しました。

「従来、トランジスタや他の電子デバイスのスイッチングに用いられる垂直電場は、電子ゲーティングによって印加されてきましたが、この方法では応答速度に根本的な限界があります」とトゥルチノビッチ教授は説明します。「私たちのアプローチでは、テラヘルツ光自体が半導体材料内で制御信号を生成するため、産業応用可能な光駆動・超高速オプトエレクトロニクス技術が実現します。これはこれまで不可能だったことです。」

この技術により、1ピコ秒(1兆分の1秒)未満という、従来の電子スイッチング手法をはるかに凌駕するタイムスケールで電子構造をリアルタイム制御できます。研究チームは、これらの光パルスを用いて材料の光学的・電子的特性を選択的に変化させられることを実証しました。

本研究の筆頭著者で、トゥルチノビッチ教授グループのマリー・スクウォドフスカ=キュリー・フェローである平岡智樹博士が、実験の実施に重要な役割を果たしました。効果を生み出すために必要な複雑な3D-2Dナノアンテナは、アンディ・トーマス博士率いるIFW Dresdenのチームによって製作されました。

このイノベーションはAIハードウェアに大きな影響をもたらす可能性があり、より高速かつ省エネルギーな計算システムの実現に寄与します。超高速スイッチング機能は、極めて高い処理速度を必要とする先端AIアプリケーションに不可欠な、信号制御デバイスや電子スイッチ、センサーの新世代開発につながると期待されています。

この技術は、高速データ伝送、先進的な計算アーキテクチャ、イメージングシステム、量子技術など、さまざまな分野への応用が見込まれます。いずれも、より高速な処理能力を求める次世代AIインフラの重要な構成要素となるでしょう。

Source: Scitechdaily

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