米議会は、中国製の人工知能(AI)が政府システムに侵入するのを防ぐため、超党派による新たな法案を上下両院で提出した。
「敵対的AI排除法(No Adversarial AI Act)」は、下院のジョン・ムーレナール議員(共和党・ミシガン州)とラジャ・クリシュナムルティ議員(民主党・イリノイ州)が主導し、中国、ロシア、イラン、北朝鮮で開発されたAIモデルの米国行政機関による利用を全面的に禁止する内容だ。特に、中国のAI企業DeepSeekを標的としており、同社は2024年1月、米OpenAIなどの大手企業に匹敵するAIモデルを低コストで開発したと主張し注目を集めていた。
法案によれば、連邦調達セキュリティ評議会(Federal Acquisition Security Council)は、敵対国製AIモデルのリストを作成・維持し、180日ごとに更新することが義務付けられる。連邦機関は、議会または行政管理予算局(OMB)からの例外承認がない限り、これらの技術の購入や利用が禁止される。また、外国の敵対勢力による支配や影響がないことを証明できれば、リストから除外する規定も盛り込まれている。
ムーレナール議員は声明で「米国は明確な一線を引くべきだ。敵対的なAIシステムが政府内部で稼働する余地はない。この法案は、最も機密性の高いネットワークを守る恒久的な防壁を築くものだ」と述べた。
この法案は、DeepSeekに対する安全保障上の懸念が高まる中で提出された。すでに一部の米企業や政府機関ではDeepSeekの利用が禁止されている。セキュリティ研究者は、DeepSeekが中国の軍事・情報活動と関係していると指摘しており、同社のプライバシーポリシーには米国ユーザーのデータが中国国内に保存される旨が明記されている。
共同提出者には、下院のリッチー・トーレス議員(民主党・ニューヨーク州)、ダリン・ラフッド議員(共和党・イリノイ州)、上院のリック・スコット議員(共和党・フロリダ州)、ゲイリー・ピーターズ議員(民主党・ミシガン州)が名を連ねており、政府システムにおける外国製AI技術の国家安全保障上のリスクに対する超党派の懸念の広がりを示している。