伝統的メディアと人工知能の対立が激化する中、業界関係者が「分岐点」と評する出来事が起きた。ディズニーとユニバーサル・スタジオは、AI企業に対するハリウッド初の大規模訴訟を起こし、画像生成AI「Midjourney」に対して著作権侵害を主張している。
この訴訟は2025年6月11日、カリフォルニア中部地区連邦地方裁判所に提起された。サンフランシスコに拠点を置くMidjourneyが、スタジオの知的財産を「バーチャル自動販売機」や「底なしの盗作の穴」として無断でコピーを生成していると非難。110ページに及ぶ訴状には、ダース・ベイダー、ホーマー・シンプソン、シュレックなど人気キャラクターのMidjourney生成画像と、元の著作権画像を並べた詳細なビジュアル例が含まれている。
ディズニーの上級副社長兼最高法務責任者ホラシオ・グティエレス氏は「海賊行為は海賊行為であり、それがAI企業によるものであっても侵害であることに変わりはない」とコメント。スタジオ側は、Midjourneyが過去の警告や著作権侵害防止の技術的措置の要請を無視してきたと主張している。
2021年設立のMidjourneyは急成長を遂げ、現在約2,100万人のユーザーを抱え、昨年は3億ドルの売上を記録したとされる。同社CEOのデビッド・ホルツ氏は、ユーザー向けの定例カンファレンスコールで訴訟について短く触れ、「Midjourneyは今後も長く存続するだろう」とだけ述べた。
この訴訟は、AI業界が前提としてきた「著作権作品を学習データとして利用するのはフェアユース(公正利用)に当たる」という考え方に根本的な疑問を投げかけるものだ。訴訟がスタジオ側の勝訴となれば、生成AI業界全体に大きな影響を与える可能性がある。ディズニーとユニバーサルは、1作品あたり15万ドル、150以上の著作物について損害賠償を請求しており、総額は2,000万ドルを超える見込みだ。
この訴訟は、ビジュアルアーティスト、報道機関、音楽出版社などによるAI企業への法的措置が相次ぐ中での出来事だが、ハリウッドスタジオによる初の大規模訴訟として、デジタル時代における知的財産権を巡るコンテンツ制作者とAI開発者の対立が新たな段階に入ったことを象徴している。